ちくさ病院

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 理事長挨拶

患者様ならびにご家族様へ



 昨日より今日、今日より明日、と超高齢化社会はひたすら足音を高めてきます。
 どんどん増えてくる高齢者を目の前にして私たちにはそれに対応するための十分なリソースが与えられていません。
 たとえば在宅で生活する高齢者の医療ニーズに応えるために訪問看護という制度はありますが、
 24時間訪問対応できる看護師さんはそれほど多くありません。
 老人ホームはどんどん出来ていきますがそこで働くヘルパーさんを確保することは容易ではありません。
 特に私たちが生活する名古屋は製造業が好調で労働人口の多くが景気のいい業界に流れていってしまいますし、
 医師の数も、看護師の数も全国平均を下回る数しかいません。
 これがもし戦争ならさながら弾のない鉄砲を手渡された兵隊のようなもので、敵前逃亡できるものなら
 したいところですが何十年も医者しかやったことがない私はどこへ逃げたら良いのかわかりません。
 それならやはり何とかしてこの超高齢化社会と戦う算段をしなければならないわけです。
 少ない戦力で敵と戦うために私たちはいつも知恵を絞っています。
 私たち医療関係者のほとんどは学校に在学中、丁寧で正確な仕事をすることしか学んでいないからです。
 効率化の手法は自分たちで手作りで編み出さなければなりません。

 医療の効率化、というと多くの人が思い浮かべるのは電子カルテだと思います。
 電子カルテで良い情報共有(ICT)システムをつくれば医療現場、介護現場の効率が上がり少ない人手で
 多くの患者さんの面倒を見ることができる、、、はずだからです。
 しかし残念ながらほとんどの医療機関でICTによる効率化は成功していません。
 電子カルテを採用した病院ほど医師が忙しくなってしまい、疲弊した医師を補助するために医療事務員を
 余計に採用しなければならないというおかしな現象がおこっています(下図)。



 なぜ電子カルテで医療が効率化しないか、というとデータベース構築の労力と情報共有の効果がつり合わないからです。

 我が国で最も成功したICT化の例としてPOSシステムをあげると、あのバーコードの中には
 (商品によるでしょうが)それほど多くの情報が詰まっているようにはみえません。
 その商品の産地、サイズ、納入価、小売価格、生産日などが織り込まれていますがデータの種類が
 それほどないためデータベースを作成する労力はたいしてありません。
 それに対してPOSシステムから恩恵を受ける人は何万人といます。
 レジに並んでいるお客さんも店員さんも会計のスピードは大幅に向上します。
 生産者も売れた量を見ながら無駄のない生産計画がたてられます。
 小売業者も売れるだけの商品を仕入れることができ、余分な在庫を抱えることがありません。
 わずか十数件のデータ入力で何万人もの人が笑顔になれるのです。
 それに対して電子カルテにおいては一人の患者さんのデータベースを作成するのにあまりに多くの労力がかかります。
 氏名、住所、電話番号から始まり、いままでどんな薬をのんだか、効果はどうだったか、副作用がでたか、
 患者さんの家庭状況から喫煙などの生活習慣にいたるまで電子カルテにはあふれんばかりの情報を
 何時間もかけて盛り込まなくてはなりません。
 そして、そのデータを利用するのは主治医と薬剤師、看護師などわずか数名しかいないのです(下図)。



 もちろん電子カルテを導入すれば従前の紙カルテに比べて正確で詳細な情報を手に入れやすい、
 という利点はあります。
 しかし、電子カルテによって外来患者さんの待ち時間が短くなったり、病院で働くスタッフの数が少なくなったり、
 医師や看護師の労働時間が減ったという話は聞いたことがありません。
 数多くの会社が電子カルテを作っています。それらを比較してみるとよく分かるのですが、
 どれも素晴らしい出来栄えで高機能、高性能なシステムばかりです。
 そしてあふれんばかりの情報が眼前にひろがり、どの情報が大事でどの情報が不要なものかさっぱりわかりません。
 宝石と石ころが同じ大きさで、同じ輝きを持ってひとつのテーブルの上にゴロゴロと並んでいるのです。
 電子カルテを活用しようとする人は、まずシステム上に転がっている石ころをどける作業から始めなければなりません。
 少し横道にそれますが、これは日本の製品によくあることなのです。
 たとえば炊飯器ですが、私が子供のころには炊飯器はボタンを押して30分ほど待つだけのシンプルな機械でした。
 それが現在ではご飯を炊く時間の予約から始まりパンを焼いたりおこわを作ったりする機能まで備わっています。
 親切この上ない炊飯器ですが東南アジアではさっぱり売れていません。
 そのいっぽうで、スイッチを押すだけの、安い韓国製炊飯器が飛ぶように売れています。

 効率化とはなんでしょうか?それは不要なものを切り捨てる覚悟です。

 日本人は真面目なので試験があると100点をとろうとします。
 良い例がアベノミクスで増税や社会保障費の自己負担を増額しながら金融緩和をしています。
 財政再建と景気浮揚が同時にできれば100点満点だからです。
 でも日本でお金を持っているのは高齢者なので高齢者に厳しい政策を採用すると景気が良くなるわけがありません。
 このような非効率性の罠に陥った人たちから医療の効率化のために電子カルテが推奨されているので、
 私たち医療関係者はそれを鵜呑みにするのではなく、効率化といったことについてもう一度考えなおさなければなりません。

 私は効率化のためのキーワードはGood Enough Pointだと考えています。

 つまり、100点をとろうとする努力を最初から放棄するのです。
 こう言うと皆さん違和感を持たれるかもしれませんが、実は病院ではよくおこなわれていることです。
 たとえば病院に通院している患者さんが夜間に急変した時、病院は救急外来を開いていて患者さんを
 診察してくれます。
 しかしそこで出てくる医師は主治医ではなく当直の医師です。
 本当は24時間365日どんな時でも主治医が出てきてにこやかに診察してくれれば100点満点なのでしょうが、
 そんなことをしていては主治医も倒れてしまうため患者さんの急変に備えて病院は当直当番を定めて
 代理の医者が診察する仕組みをつくっています。
 これは患者さんにとっては100点のサービスではないでしょうが、とりあえず急場をしのぐ80点のサービスは
 受けることができるというわけです。
 そして、この80点がGood Enough Point なのです。
 マクドナルドはこのことをよく理解していて、世界中どこにいてもわりと安くて、それなりに美味しい80点の
 ハンバーガーを提供しています。
 80点から100点を目指そうとするととてつもない企業努力が必要で、その割にそれに見合う顧客満足度が
 得られないと知っているからです。
 お客があまりこだわらないサービスはあえてバッサリ切り捨てています。
 だからマックのハンバーガーは決して世界一美味しいハンバーガーではありませんが、マクドナルドは
 世界一のハンバーガーチェーンなのです。
 私たちが取り組んでいる在宅医療も状況は似ています。
 在宅医療というと医療・介護関係者も患者さんもそのご家族も、なぜだか24時間営業だと勘違いしていたりします。

 私たちは24時間対応はしていますが24時間営業はしていません。

 もちろん、24時間365日主治医が日中と同じように深夜も診察し、検査もおこない、お薬を処方する、
 それが100点満点なのはわかっています。
 しかし今の日本では人的資源も経済力も足りなくて、そのようなご希望には沿えないのです。
 ならば、私たちとしては24時間365日患者さんから80点をいただける医療・介護の仕組みづくりを
 目指すしかありません。
 政治家も、官僚も大学教授も若い頃から100点をとることだけを教わってきた人たちです。
 誰も教えてはくれません。
 私たちは効率化されたシステムを全て私たちの手作りで創りあげなければなりません。
 私たちの働いているフィールドはそのような創造性が常に要求される職場です。
 そんな職場が好きな人は是非参加してみてください。
 
理事長 加藤豊

  • 理事長挨拶

    理事長 加藤 豊の経歴

    昭和62年 名古屋大学医学部 卒業
    昭和62年 小牧市民病院 研修医
    昭和63年 小牧市民病院 内科勤務
    平成06年 愛知医科大学微生物免疫学 助手
    平成10年 愛知医科大学微生物免疫学 講師
    平成13年 医療法人生寿会かわな病院 内科勤務
    平成15年 医療法人生寿会五条川リハビリテーション病院 院長
    平成18年 医療法人喜浜会 理事長
    平成20年 医療法人豊隆会 理事長 

 研究業績

※論文は他の研究者からの引用が多い順に並んでいます。

 書籍のご案内

  • 理事長挨拶


    当法人理事長 加藤 豊 が幻冬舎より一冊の本を出版いたしました

    『医者が教える幸せな死のかたち』

    ――家族に迷惑をかけない
       自分も苦しまない幸せな死とは――

    本書では、在宅医療の専門家であり、年間100人以上を看取る医学博士:加藤豊が、 自分の死に方を選び、家族に迷惑を掛けずに幸せに死ぬ10のヒントを伝授します。

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