高齢化社会の到来とともに、最近は私どもも高齢者の方を診察する機会が増えました。
寝たきりの患者さんも多く、病棟回診や往診にうかがうと半数以上の方はオムツをはめています。
オムツかぶれがひどいのでかぶれ止めの軟膏をください、などと言われることも増えてきているわけですが、待ってください。この患者さんはなぜ
オムツをはめているのですか?
そう質問されると、ご本人やご家族様のみならず、看護師や主治医も説明できなかったりします。
オムツをはめて生活することがどういうことなのか。
経験のない方にはオムツ体験をお勧めします。オムツをして半日ていど生活してみるのです。
当然、小便や大便はオムツの中でします。
オムツをはめている人は排便をしてもすぐにオムツをかえてもらえるわけではないので、便をしたら最低数時間はそのまま生活を続けてください。
すると、高齢者にオムツを強要することがどういうことなのか理解できるようになると思います。
「オムツかぶれがあるので、軟膏を処方しておきますね。」
これでは子供の使いです。
なぜオムツが使われているのか、失禁するのはなぜなのか、失禁させないためにはどうしたらよいのか、そのためにどのような治療方針、リハビリ
プログラムが組まれているのか。
内服薬の管理から生活環境の整備まで、わたくしたち医療者は患者さんのために明確な指針を示さねばなりません。
「この患者さんはなぜ怒ってばかりいるのですか?」
「なぜ転んでばかりいるのですか?」
「夜中に何度もトイレに起きるのはなぜでしょう?」
「服をめくると皮膚がぼろぼろめくれて落ちてきます。」
「お部屋が臭い。」
「だんだんしゃべらなくなってきました。」
高齢者が抱えている全ての問題に原因と答えと解決のための方針があるはずです。
私ども医療法人豊隆会及びそのグループ施設では、患者さんが抱えている様々な問題点と向き合い、ひとつひとつ解決していくことを目指していま
す。
その先に、患者さんの満足と幸福があると信じているからです。