医療関係者の皆様へ MESSAGE

医療関係者の皆様へ

最初に、このグラフを見てください。

生産性と効率の追求

これは職域別に2012年から2018年までの労働者数の変化を現したグラフです。医療・介護に従事する人がものすごい勢いで増えていることがわかり ます。私たちが働いている職域は人喰いモンスターなのです。いっぽう、今後10年間のうちに日本全体で1,000万人の労働者数が減少すると言われて おり、高齢者が増加し続ける中で、今と同じことを続けていては日本は絶対に立ち行かないことがわかると思います。
どうすればよいのか。我々は日本と同じような人口減少社会に見舞われた人たちの歴史を振り返ることができます。中世ヨーロッパではペストが大 流行し、人口が半減して人口減少社会に突入しました。その結果、ヨーロッパが滅んでしまったのか、というと、そうではなく、少なくなった労働 者の発言力が高まって民主主義が発達しました。また、少なくなった労働力を補うため、産業革命が生まれました。同じ時代に、人口増加社会で あった日本では一人の人を駕籠(かご)に乗せて二人で担いで運んでいましたが、人口減少社会でそんな非効率的なことをするわけにはいかず、蒸 気機関車に大勢の人を乗せて運ぶことが考え出されたわけです。


私たちが住んでいる日本は長い間、人口増加社会が続いてきたため、生産性と効率に関する考え方がおろそかになってきました。例えば、昔の戦争 では神風特攻隊をはじめとして、貴重な兵士の命を使い捨てにしていました。最近でも低価格で高品質な商品を製造するために長時間ブラック労働 が横行しています。その結果として日本人の生産性は先進国の中で最低と言われるにいたりました。繰り返しますが、このようなことを続けていて は国が滅びてしまいます。 この人口減少社会に対応する処方箋を、私たちは持っています。生産性と効率の向上です。どのようにすれば生産性が向 上するのか。まず、私たち一人ひとりの問題解決能力を強化することです。医療・介護の対象になるのは、多くの場合高齢者ですから、高齢者にあ りがちな身体トラブルに関する基礎的な知識と対応方法を身に着け、起こりうる事故や疾病を予測して、それを未然に防いだり、早期に治療するた めのスキルを習得する必要があります。次に、完璧を目指さないこと。解決しようとする問題に優先順位をつけ、早く解決しなければならないこ と、重要なこと以外はコミットしないようにしなければなりません。日本の消費者はサービス業に対して完璧を求める習慣がありますが、私たちは 要望のすべてに応えることはできないのです。


また、発想の転換も必要です。日本の医師は世界一長時間労働ですが、本当に労働時間を短縮するための努力をしてきたのでしょうか?たとえば、 市民病院で働く医師の多くは長時間労働です。入院や救急対応だけでなく、大量に押し寄せる外来患者の診察をする必要があるからです。それだっ たら、いっそのこと、病院の外来部門を切り離して開業医の医師にフロア貸ししてはどうでしょうか?市民病院は赤字経営が多いですが、フロア貸 しをすれば賃料が入ってきます。開業医は市民病院の1階で開業できれば大喜びです。病院の医師は病棟業務と救急外来に集中できます。よいことず くめですが、このようなアイデアは規制の垣根を撤廃しなければ実現しません。最後に、定時で帰ること。それを目指して働くこと。残業をしない で済むためにはどうしたらよいか、常に考え続けること。私たち医療法人豊隆会は他にもたくさんの処方箋を持っていますが、頭の中で想い描くだ けではなく、一つ一つ実行していかなくてはなりません。そのために、皆さんの力を貸してください。